
利尿剤の中で一番特殊な薬が「サムスカ」なんじゃないでしょうか。
サムスカは他の利尿剤と作用機序も違い、注意点もあります。
その注意点の1つが経管投与NGというところです。
サムスカは粉砕することは問題ないのに経管投与NGという特殊な薬なので、
サムスカと他の利尿剤の違いと経管投与NGの理由について解説していこうと思います。
今回の記事は株式会社大塚製薬さんのHPと、
を参考に作成しています。
Contents
経管投与NGなのは副作用の口渇が感じられないから
サムスカは今ある利尿剤の中で一番強力な利尿作用を示す薬じゃないでしょうか?
そのため脱水を始めとした「重大な副作用」も多いです。
重大な副作用として「血栓塞栓症」「高ナトリウム血症」というのがありますが、
これは「急激な水利尿作用」が原因になります。
利尿作用が強く起きて脱水に気が付かないと上記のような重大な副作用を起こしてしまいます。
逆に、脱水に気づくことさえ出来れば対処することが出来ます。
サムスカは水利尿、他の利尿剤はナトリウム利尿
前の記事で4つ利尿剤を上げましたが、サムスカはその中の「バソプレシンV2受容体拮抗薬」です。
一般的な利尿剤はナトリウム利尿と言われ、
体内のナトリウムの再吸収を阻害して利尿作用を発揮します。
ナトリウムは再吸収されないので尿中に排泄され、ナトリウムと共に水も排泄されます。
ナトリウムと水が一緒に無くなるというのがミソです。
サムスカは水利尿と言われ、水の再吸収をするバソプレシンV2受容体に拮抗して
利尿作用を発揮させます。
水だけを身体から無くなるのでナトリウムはそのままです。
水だけが無くなるので、相対的にナトリウムの濃度が上がりますね。
これは同じ量の塩を水に溶かす場合、
コップ一杯の水に溶かすのと2リットルの水に溶かすのとでは塩辛さが違うのと一緒ですね。
このナトリウム濃度が高くなるのを防ぐために一般的な利尿剤を併用する必要があります。
ループ利尿剤などを併用しないと高ナトリウム血症になってしまいます。
前在籍していた薬局の患者さんで、
本来なら「追加処方」されるはずのサムスカがループ利尿剤やチアジド系利尿剤から「変更」されて、
とてもひどい口渇・脱水になった患者さんがいました。
緊急入院したときにサムスカ単独が原因ということがわかりました。
こういうことが実際にあり、口渇に気付かなかったらもっと大変な事になっていたかも知れません。
なので経管投与や口渇を感じられない人には投与を避けるべきですね。
前回の記事はこちら
粉砕しなくても簡易懸濁するのもNG
副作用の早期発見につながる症状が「口渇」、つまり「脱水」に気付けるかが重要です。
サムスカは製剤的には粉砕すること自体に問題ありませんから
口から飲むぶんにはどんな飲み方でもOKです。
ただ、錠剤の形のまま患者さんに渡しても
在宅で簡易懸濁をして経管から薬を服用するのは副作用に気付くことが難しくなるのでNGです。

経管投与っていうのは鼻から胃にチューブをとおして栄養を摂取したり
お腹に穴を開けてそこから栄養を摂る、いわゆる胃ろうと呼ばれる方式ですね。
この方式を採用している人の多くは口から飲食物を摂取出来ない人です。
一部胃ろうだけど口からも食べているという人も居ますが、
常に口から摂取しているというわけではないので危険性が高いんじゃないかと私は思います。
最終的には処方医の判断次第ですが。
サムスカの投与にはeラーニングを修了した医師のみ
https://www.otsuka-elibrary.jp/pdf_viewer/?f=/product/di/sag/tekisei/file/sa_teki_05.pdf
https://www.jshp.or.jp/cont/14/0327-1-3.pdf
サムスカの初回投与は入院中です。
理由は副作用の早期発見、血中ナトリウム濃度の観察です。
先程も話したようにサムスカは水利尿作用が強くナトリウム濃度が急激に高くなる危険性があります。
それを防ぐために入院して投与後4〜6時間後、
8〜12時間後に血中ナトリウム濃度を測定しないといけません。
また、これを1週間毎日続けないといけないです。
こういう理由から入院中でないといけません。
退院後、外来で治療していく場合は処方医が「eラーニングを修了した医師であるか」
を確認しないといけません。
私は継続処方されている患者さんや、
外来初回でも他の患者さんへの投与実績のある医師からの処方しかないので
このサイトを使ったことはありませんが、
通常は処方が出てこのサイトを利用してeラーニング修了医師かどうかを確認する必要があります。
新入社員や実習生などはもしかしたら知らないかもしれないですが、重要な確認事項の1つですね。
最後に
注意事項は多いですが心不全・肝硬変による体液貯留という適応だけではなく、
「常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)」という難病に指定されている病気の治療薬でもあります。
ADPKDの治療に関しては病状の進行抑制というとても重要な役割を果たします。
治療中に急激なナトリウムの上昇、口渇に気付けず病状悪化、というのでは元も子もありません。
とてもいい薬には違いないので、しっかり管理して病気を治療していきましょう。